時計は回る

コウ←ヒロ

 振られちゃった、と彼は言った。

 神浜コウジが帰国した。
 四年に一度のプリズムキングカップも終わり、ヒロとカヅキは既に個人やセット扱いの芸能活動を再開している。オーバーザレインボーが活動を休止している間、その空白を埋めるかのように活躍の場を広げた後輩たちが世間に認知されるようになり、結果的にエーデルローズは良い方向へ勢いづいて、様々な場所で取り上げられるようになった。
 そんな中でのコウジの帰国はとりわけビッグニュースで、騒ぎになることを避けて空港へ出迎えには行かなかったが、心は素直に浮き足立つ。
 三人で顔を合わせたのはヒロのアパートでだった。よく作ってもらっていたなんだかよくわからない長い名前の料理には及ばないが、彼のいない間に覚えたカレーを作った。
 積もる話は尽きない。ハリウッドのこと、プリズムキングカップのこと、かわいい後輩たちのこと、これからのオーバーザレインボーのこと。
「そういえば、いとちゃんには会えたのか?」
 話題に出したのは弾みだった。いつかの楽屋の時のような、他愛ない雑談のひとつ。
「ああ……」
 しかしコウジの反応は予想に反して歯切れが悪く、その瞬間、言ってはいけないことだったのだと気づいて背筋がざわりと疼いた。けれどもう、零れた水を取り返すことはできない。
 彼は以前よりも大人びた顔を困ったように崩して、仕方なさそうに溜息をついた。
「振られちゃった」
「え」
 そうか、そういうのよくわかんねえけど元気出せよ、うん、ありがとうカヅキ、などと話す声が、耳に入っても頭に届かない。
 プリズムキングカップが終わって、コウジが帰国して、オーバーザレインボーが活動を再開して。
 なにもかも元通りになる、はずだった。

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!