中等部コウジ×RLヒロ
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収録を終えてテレビ局を出ると、あたりはすっかり暗くなっていた。
ソロデビュー後の活動は、エーデルローズと仁のバックアップのもと、ヒロの心を置き去りにして順調に進んでいる。望まれた姿になるのがアイドルの仕事だ。そうなれるよう教え込まれたヒロの身体は、カメラの前に立てばすぐに笑顔になり、軽やかに踊ることができた。カメラやファンの目のない、誰にも見られていない場所ではどんな顔をしているかなんて関係ない。だって誰にも見られていないのだから。
帰る夜道に感慨もなにもない。硬いアスファルトを機械的に踏み進めていたヒロの足が、アパートまであともう少しというところで凍りつく。
夏はとっくに過ぎたのに、一瞬にして汗が噴き出した。数歩先の街灯の下、色気のない光に照らされて、よく知る少年が不安げに立っている。
少年はひとの気配に気づいたのか、所在無げに彷徨わせていた視線をヒロへ向けた。間の抜けたように口を開けてヒロを見つめ、三度瞬きをしてからようやく声が零れ落ちる。
「……ヒロ?」
呼吸も鼓動も止まった気がした。
ヒロが見間違うはずがなかった。見下ろすはずのない「今」よりも低い背、緑色の制服、まだ幼い顔立ち。彼と同じ時間にいるヒロにこれからなにをされるかなんてこれっぽっちも知らない表情。
「…………コウジ…………」
いまヒロの目の前にいるのは確かにコウジだ。
──中等部の頃の、まだ決裂してしまう前の。
「ヒロ……? なんだか背が、伸びて、」
コウジはヒロを見上げて蜂蜜色の瞳を揺らした。今よりも少し短い髪が、夜風に煽られてふわふわと舞う。
このコウジにとっては、今のヒロはどう映るのだろう。ここが数年後の世界だと知っても、今もコウジと隣り合って過ごしていると無邪気に信じてくれるだろうか。
「コウジ、」
喉がからからに乾いてうまく声が出てこない。呼ばれたコウジは、様子を伺うようにヒロを見つめている。その瞳に、今みたいな、嫌悪や侮蔑の色はない。
これは夢だ、きっと夢だ。コウジはもう、こんな目ではヒロを見ない。精神がすり減りすぎて、仕様もない夢を見てしまっているんだ。
だから誰もヒロを見ていない。誰にも見られていない場所ではどんな顔をしているかなんて関係ない。
頭がくらくらとして高熱を出した時のようだった。つめたい目をしたコウジの前では滑るように口が回るのに、今はたった一言を吐き出すことにすら喉が詰まりそうになる。
「……ごめん……」
コウジが眉をひそめて不可解だと示すので、耐えきれず顔を伏せてしまった。
俯いた視界で、自分の髪の隙間からコウジの脚が見えた。真っ白いズボン、学校指定のローファー。背はヒロより低いくせに足のサイズは同じくらいで、コウジらしいと思うと目を離せなかった。
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