波は立たない

ヒロとカヅキ。RSSS#7のあと

 生まれて初めて永遠を願った。
 二年前のあの日ステージを降りて、これからはスポットライトのない世界で石を投げられて暗い場所で誰の注目も浴びずに生きてゆくのだと思っていたのに、コウジとカヅキが俺を再びステージへ上げてくれた。隣に立って、同じ光に照らされて、同じ景色を見て、生まれて初めて永遠を願った。
 ずっとこのまま三人でショーをしていたい。この幸福な空気を吸っていたい。この瞬間が永遠になるように、いっそ時が止まればいいのにと、俺は幼い頃教会でしていたように本気で願ったのだ。

 ミナトとデュオを組むとコウジが言った。
 俺とデュオを組みたいとカヅキが言った。
 ふたりは俺と違う未来を見ている。俺には見えないなにか新しい世界を見ている。俺の足はオーバーザレインボーの、アイドルの速水ヒロとしてステージに立っているのに、ふたりはどこか別のところへ行ってしまったようだった。俺の居場所はここで、俺の役目はこれで、そちら側ではないのに、それは違うと彼らの言動が伝えてくる。俺だけが霧の中、迷子の子供のように立ち止まってしまっているような気分だった。
 ついさっきまでは。
「そろそろ戻るか」
「え?」
「あんまり遅いとコウジが心配するぞ」
 カヅキはそう言ってにっと笑うと俺の肩をぽんと叩いて歩き出した。迷子の子供を気にかけた足が、未来へ向かって進んでいる。向かう先が俺とまったく同じところかはまだわからないけれど、ここじゃないところにも立つ場所はあるのだと示してくれる。
 振り返るとさっきまで霧がかかっていたとは思えないほど晴れ渡った空の下、湖が一面に広がって見えた。空を水面に映し太陽の光を一身に浴びた湖は、プリズムショーのリンクによく似ていた。

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