ハエジゴク

嘘は本当、本当の嘘

 愛してる。
 ―――どないしたん。熱でもあるん?
 失礼な奴だな。こういう言葉が欲しいんじゃねえのか?
 欲しくない、云うたら嘘になるけど―――
 じゃあいいじゃねえか。愛してるぜ?
 怖いわー。自分ほんまに跡部?
 他の誰に見えてんだテメエは。
 せやなあ。こない偉そうな奴、跡部しか知らんし。
 喧嘩売ってんのか?
 どっちかって云うとそっちの方が喧嘩売ってるように思うんやけど。いきなり愛してるだとか、びっくりして鳥肌立ったわ。
 一々むかつく奴だな。折角云ってんのに。
 なんも脈絡ないのにいきなり云われても信じられへんわ。
 ああ? 嘘だって云うのか?
 嘘やないん?
 ―――どっちだって云って欲しい?
 そら本当やって云われたいけど、嘘って云われた方が安心する気ぃすんねんけど。
 じゃあ嘘。
 なんやねんそれ。
 嘘だ。
 ―――愛してる云うのが? それが嘘やって云うのが?
 全部嘘だ。
 そら矛盾しとるやん。「全部本当」てのもナシな。
 んだよ。じゃあお前はどうなんだ。
 俺? 今更やん、愛しとるで?
 嘘くせえ。
 失礼やなあ。ほんまやで。
 じゃあ俺も本当のこと云ってやるよ。

 愛してる。

 跡部はほんまに、嘘吐くんが巧いなあ。
 テメエには及ばねえよ。

「綺麗な嘘を重ねる不埒な君に」

quotation by “IMITATION CRIME”

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!