サボり
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少年達を脅かしてはならない。
揺さぶってはならない。
無闇に触れてはならない。
過剰に干渉してはならない。
「アトベ」
芥川はこうやって、前振りもなく唐突に、クラスの離れた跡部景吾の元を訪れる。ほぼ一日中寝ている常の姿からは想像もつかぬような、エネルギーを持って。
「外行こ」
跡部が芥川の言葉を無碍にすることが出来ないのを百も承知で芥川は云う。例え早朝であっても、深夜であっても、十分後に四限を控えた休憩時間であっても。
そうして、跡部の溜息が宙に消えて彼が席を立つのを待つ。それだけは、待つ。
「何処だ」
「C棟の屋上」
彼が自分のリクエストに逆らわないのも解っている。
二人は教室の混雑にも関わらず、自分たちが異様に目立つ存在であるにも関わらず、誰にも気付かれずに風のように現実を抜け出す。
四限、担当職員が出席を取るまで、誰も無に気付かぬ侭。
蒼空と柔らかい風は彼らに味方する。
少年達を止めてはならない。
少年達を止めることは出来ない。
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