二匹

猫どこ直後

「本当に、心臓が止まるかと思いましたよ」
 年が明け、なにやらまた食べ始めている連中を横目に、古泉が囁いた。
「まさかあそこで、あなたがこちらへ来るとは思っていませんでしたから」
「俺もあそこでトリックを見ていたとは気づかなかった。よくあんな猫を連れてきたもんだ」
「苦労しましたからね」
 その苦労が本当に必要だったのかどうかは疑問だが、功績は称えてやろう。飼っている俺や、四六時中構っている妹も気づかなかったほどに瓜二つなのだ。
「もう少し引っ張れると思っていたのですが、涼宮さんと鶴屋さんには脱帽です」
「ごちゃごちゃ余計なことを考えすぎなんだよ。次はうんと難しくしてやれ。その方があいつの機嫌もよくなるだろ」
「そうですね、恐れながら少々見くびっていたようです。前回のことでわかっていたはずなのですが」
 そうだ。孤島でも、古泉の予定よりはるかに早くサプライズは幕を閉じた。実は学習能力がないんじゃないのか、お前。
「手厳しいですね。ええ、善処します」
 苦笑した古泉はふう、と深呼吸して、俺に向き直った。冬合宿での役目を終え、新年を迎えてようやく安心したのか、その笑みに嫌味はない。
「改めて、昨年はお世話になりました。今年もよろしくお願いします」
 お世話に、ね。全くだ。その内容を全て反芻していたら冬休みが終わってしまうので、それはしないでおこう。
 今は、もっと相応しい言葉がある。
「こちらこそ」

(実は仲いい11のお題04 利口なものほど空回り)

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