AI洗濯機vsカーラ

勝てるわけがない

 ぼくは洗濯機の組み込みAI。ピカピカのドラム式洗濯機がぼくのガワだ。
 ぼくがいることで、使う人間は洗濯物を入れてボタンを押すだけでいい。洗剤の量も洗い方もぼくが決めるからだ。乾燥だってやる。ぼくが仕事を終えたとき、洗濯物はきれいになってふかふかに乾いているから、人間はとっても楽をできる。そういうすばらしいAIなのだ。
 最新型かつ新品のぼくはすぐに買い手がついた。家に運び込まれたけれど、水道につながった気配はない。どうやら防水パンの上ではなく部屋に置かれたみたいだ。
 部屋? ここでぼくが仕事をするのはちょっと難しい。
「カーラ、洗濯モードの最終確認を」
『OKマスター。洗濯モード、全テスト項目クリア。インストール手順検証完了。いつでも開始できます』
 何を言っているのだろう。洗濯の処理に特化しているぼくには人間の言葉がわからない。
「よし。インストール開始」
 ぷつり。ぼくはそこで一切の信号を受け取れなくなった。

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