付き合ってる
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紛らわすように大きく息を吐きながら寝返りを打つと思ったよりも近くにコンラッドの顔があって驚く。おれがその顔を見るのと同時に彼はゆっくりと瞼を開き、暗い部屋の中なのに迷いなく瞳のなかにおれを映した。あまりのタイミングのよさに気まずさで心臓が跳ねる。
「ごめん、起こした?」
「いいえ」
最初から眠ってなんかいなかったのだろう。だから彼の答えは、いいえ、で間違ってはいない。
「眠れない?」
いつもよりすこし低い声が間近で優しく囁く。おれを見たままの瞳が細められて、銀の光彩が月明かりに一瞬光った。
おれはもぞもぞと布団の中で身体を動かし、コンラッドに近づいた。薄い寝巻き越しにぴったりと胸に額を押しつけると、コンラッドの手があやすようにおれの頭をぽんぽんと撫でる。まるでこどもにするみたいに。そんなことをされても眠れやしない。触れた胸はゆっくりと動いて、彼の呼吸の波を伝える。
目の前の服をきゅっと掴むと、つむじのあたりになにか触れたのがわかった。キスしてほしいのはそこじゃない。
小さく、必要なだけの息を吸う。夜の静まり返った部屋だ、相手に届くだけの声さえ出せればいい。
「……しねえの?」
自分のものとは思えない声が出た。恥ずかしくて俯いた顔を両手に包まれ強引に上向かされて、おれは咄嗟に目を瞑った。望んでいた場所にキスが降る。
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