ひとつの朝

コン←ユ

「おはようございます、陛下。……おや、ゆうべは独り寝だったんですね」
 寝室まで主を起こしにきた護衛が、ベッドの上を見てそう言った。よく強引に潜り込んでは寝言や寝相で有利を悩ませているヴォルフラムの姿がなかったからだ。
 有利はああ、と思い出すようにぼんやり呟き、寝起きの目をコンラートに向ける。まったくいつも通りの爽やかな笑顔に、お決まりの「陛下って呼ぶな」よりも言っておくべき事実を簡潔に伝えた。
「婚約破棄したんだ」
 さらりと言い放つその顔は真剣で、冗談とは程遠い。
 思いがけない言葉にコンラートは必死で頭を回転させ、適切な返事を探した。喉が異様に渇いてひりつく心地がする。
「…………それはまた、突然どうして」
「ほかに好きなひとがいるから」
 当然だというような調子で即答するが、コンラートにとっては青天の霹靂の二撃目でしかない。
 有利はのそりと起き上がってベッドから出ると、「おはよう、コンラッド」と言ってこの会話を打ち切った。

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