君を誘う

中1の好奇心
真琴←遙の恋に無自覚片想いで中学1年のかっこ悪くてちょっと不純な付き合ってないまこはる

 セックスしたことあるか、と訊いた時の真琴の反応といったら面白いというよりほかになかった。遙の発言を理解するのに時間を要し、理解してから赤くなり顔を歪めて背けたと思ったら伺うように視線をちらりと寄越す。口は酸素を欲しがる金魚のようにぱくぱくと動いたが、やっと発せられたのはたったの一言だった。
「……ないよ」
 知っていた。ずっと一緒にいるのだ。文字通り、ずっと。もし真琴にそんな経験があるのなら、遙が知らないはずがない。だからこれはただ真琴の口から答えを聞きたかっただけだった。
 水泳部を辞めて、放課後がこんなにも長いのだと知った。退屈で仕方がなかった。一週間後に真琴も部を辞めると、同じように退屈を持て余すのが日課になった。
 永遠のような退屈の中で、性はほとんど唯一の刺激だ。真琴には刺激が強すぎたようだが。
 突然なにを言い出すのかと真琴が目で問いかけてくる。明確な答えは遙も持っていなかった。それでも考えるより先に口から零れてくるのは、つまり考えずとももっと前から遙がそれを抱えていたことの証だった。それがたまたま、今このタイミングで声になっただけのこと。
「やってみるか」
 ひゅうと真琴が息を呑む音が、夕焼けの部屋に一等大きく響いた。

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