夜景なんていらない

カケルと援交するモブお兄さんの話。すぷん女子会絵のJKカケルがかわいすぎて援交したい気持ちを抑えられなかった

 そういえばこのホテルも十王院の持ち物だった気がする。
 そう思ったのは連れ立ってエレベーターに乗ってからだった。カケルくんは僕より頭半分くらい背が低く、オレンジ色の明るい髪を撫でつけているのがよく見える。こんな時でも落ち着いた佇まい、よくものを見極める眼鏡と着慣れたスーツは彼がビジネスマンであることを強調していた。ただ、戸惑うほどに本人が年若いだけ。
 エグゼクティヴや富裕層の観光客をターゲットとしているこのホテルに男二人で来て、「そういうホテル」の代わりにしようとしているなんて誰も思わないだろう。
「……どうして、こんなことを?」
 部屋に入って鍵をかけてもカケルくんは動揺する素振りすら見せない。スイートでなくても十分に広い個室で、彼は夜景を見下ろしたあと、カーテンを閉めた。
「ん?」
「きみは、別にお金なんかに困ってはいないだろう」
 僕のほうがよほど緊張していた。言い出したのは自分なのに、カケルくんがあっさり了承したのも、こんなに良いホテルをすぐに手配してくれたのも、なにか騙されていると考えたほうが納得がいく。この部屋から生きて出られないのかもしれないとすら思う。誰かがあからさまに尾けているような気配はないけれど、このホテルが彼の擁する資本でできていることを思うと、部屋にカメラや盗聴器が仕掛けられていたって不思議ではない。
 カケルくんは窓際から、部屋に入ってすぐのところで突っ立ったままの僕の前へ戻ってきた。
「んー……興味あるから?」
 茶化すように首を傾げる。眼鏡のフレームが、少し暗めの部屋の照明を浴びてきらりと光った。
「お金出して俺っちと寝ようなんて考える、モノズキなお兄さんにね。一人寝が寂しいなら抱き心地のいいオネーチャンは山ほどいるし、俺っちこれでも未成年だから、リスク結構高いってわかってないはずないんだけど」
 あ、もちろん訴えたりはしないから安心してくださいね。と、カケルくんはぱちりと音のしそうなウインクをする。アイドルみたいにかっこいい。そのかっこいい顔のまま、守秘義務込みの値段ですから、と仕事の契約みたいなことを言った。
 喉がからからに渇いているのを感じる。鼓動が高鳴っているのは、緊張なのか期待なのかもうわからない。学生のころ、好きだった女の子の隣の席に座った時の気持ちに似ていた。
「……きみは、きみのその財産だけに価値があると思っているのかもしれないけれど」
 カケルくんは眼鏡を外してデスクに置いた。眼鏡をかけている時よりも幼く見える。実際に幼いのだ、僕なんかに比べたらずっと。そんなひとと今こうして同じ部屋にいるだけで、まだ指先一本も触れていないのに頭が茹だって倒れてしまいそうだ。
「きみ自身がとてもうつくしいんだよ。カケルくん」
 本当に本当の、心からの言葉だった。寝るという名目で彼を一晩買ったけれど、男同士でセックスをしたいわけでも、彼に無体を強いたいわけでもない。ただこの美しい顔を近くで見て、そばで過ごしてみたかった。
 カケルくんは目をゆっくりと大きく見開いて、その整った顔の中でもひときわ美しいオレンジ色の瞳で僕を見た。そんなことなどまるで全く知らなかったとでもいうようなその反応に、もうこれだけで彼に渡した金額以上の経験をしたと思った。

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!