前戯
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この男の脳みそはピンク色をしているに違いない。
思ったことをそのまま声に出すと、首元にくすくすと笑う吐息がかかった。
「ひどいなハニー、俺はこれでも組織の参謀役なんだが」
「知ってるわよダーリン。電話をいじくったり、株価をアレしたり、お役所の偉い人にアレしたりしてくれてることも……ン、」
最後のは俺が意図した音ではない。脳みそピンク野郎が乳首をべろりと舐めてきたせいだ。
ついさっきこの部屋に入ってきて、挨拶代わりのキスをしたところだったのに、いつの間にシャツを脱がされているのか、本当に呆れ返るほど手際が良い。
「エロオヤジ……」
ぼやいた言葉をベルナルドは否定しなかった。自覚があるならなおさらたちが悪い。
「頭を割って確かめてみるかい?」
不意に顔を上げたベルナルドの、眼鏡を通さない瞳がまっすぐ俺を見る。その様子は驚くほど無感動で、たとえば俺がそうすると言えば迷わず頭を差し出してきそうな雰囲気すらあった。ぞっとしない。
「バーカ」
両手を伸ばして、エメラルドの髪をぐちゃぐちゃにかき混ぜた。この髪の下の皮膚の下の頭蓋骨の下にベルナルドの脳みそがある。見えないけれど、おそらくピンク色の。
乱れた前髪の下、おかしそうに笑う目元が見えた。俺もたぶん同じ顔をしている。
たまらなくなってキスをする。舌を入れる代わりに唇を舐めてやった。
「そんなことよりセックスしたいワ」
「同感だよ」
脳みその色なんてどうでもいい。そんなことよりずっと確実に触れられるものが目の前にあるのだから。
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