消失後キョン独白
—
どうやらこのエセくさい爽やかエスパー少年は自分の味方のようであり、またそうしておいた方が何かとメリットがあるようだ、とはっきり理解したのは、学ラン姿の古泉のような誰かを相手した後だった。
『そいつ』は俺には微塵の興味もなく、それでも北高の文芸部室まで来たのは黒いブレザーのハルヒが俺についてきたからで、つまりそんな奴は古泉一樹ではないのである。対外的な仮面に笑顔を用いるところは変わらなかったが、同時に警戒心も剥き出しで、当人は巧くやっているつもりなのかも知れないが俺にはわかる、本物の古泉ならばもっと綺麗に笑む。その中途半端さに無性に苛ついた。
古泉じゃない奴が、古泉の外見で、古泉のように振る舞おうとして失敗するなんて、俺を侮辱しているとしか思えない。
だから、
「手が止まっているようですが、鍋はもういいのですか?」
こいつがへらへらと笑って過ごしているならば、それでいい。
それがいい。
(実は仲いい11のお題05 溜め息も諦めも今更)
※コメントは最大500文字、5回まで送信できます